月経困難症とは
月経困難症とは、月経期間中に日常生活へ支障をきたすほどの症状が現れる状態です。下腹部や腰、肛門周囲の痛みなど、症状の現れ方は人によって異なります。
日本では約900万人がこの症状に悩んでいるとされますが、医療機関を受診している方はわずか6%程度にとどまります。「生理痛は耐えるもの」という認識や、市販薬で対処できるという考えが根強いことが背景にあります。
痛みの原因は、子宮が月経血を押し出す際の収縮によるものが中心ですが、子宮内膜症や子宮腺筋症といった疾患が隠れている場合もあります。強い痛みが続く方は、一度医療機関での検査をおすすめします。
月経困難症の症状
下腹部痛・腰痛
月経時には、子宮内膜を体外へ排出するため「プロスタグランジン」というホルモンが分泌されます。このホルモンには子宮を収縮させる働きがあり、同時に炎症や痛みを引き起こす作用も持つため、下腹部や腰に痛みが生じます。
吐き気
プロスタグランジンは胃腸にも作用します。分泌量が多いと胃や腸が過度に収縮し、吐き気や胃の不快感として現れることがあります。
頭痛
月経時の頭痛は「月経関連片頭痛」とも呼ばれます。エストロゲン(卵胞ホルモン)の急激な低下が引き金となり、通常の片頭痛より痛みが強く長引く傾向があります。
イライラや気分の落ち込み
排卵後から月経にかけてエストロゲンが急減すると、精神面にも影響が出やすくなります。エストロゲンには気持ちを安定させる作用があるため、減少に伴いイライラや落ち込みを感じやすくなります。
貧血
経血によって体内の鉄分が失われると、赤血球の生成が追いつかなくなり「鉄欠乏性貧血」を起こしやすくなります。酸素が全身に行き渡りにくくなり、めまいや倦怠感などの症状が現れます。
眠気・だるさ
黄体期に増加するプロゲステロン(黄体ホルモン)には、基礎体温を上げて体を休息モードにする働きがあります。このホルモンが分解されて生じる「アロプロゲステロン」は、睡眠薬に匹敵するほどの眠気をもたらすこともあります。
月経困難症の種類と原因
機能性月経困難症
子宮や卵巣に明らかな病気がないタイプの月経困難症です。思春期〜20代に多くみられます。
プロスタグランジンの過剰分泌
プロスタグランジンが必要以上に分泌されると、子宮が過度に収縮して血流が悪化し、痛みが強まります。血液中に入り込んだ場合は、頭痛や吐き気を併発することもあります。
子宮口が狭い
出産経験のない方や若い方は、子宮口や子宮頸管が細く硬いことが多く、月経血の排出時に痛みを感じやすくなります。月経血が逆流して骨盤内に流れ込み、そこに含まれるプロスタグランジンが痛みを引き起こすケースもあります。
心理的な要因
痛みへの強い不安やストレスが、症状を悪化させる場合があります。心理的な緊張がホルモンバランスや神経伝達に影響し、痛みの増強につながることがあります。
器質性月経困難症
子宮や卵巣に病気がある場合に起こる月経困難症です。20代後半以降にみられることが多いです。
子宮内膜症
卵巣や骨盤内など子宮以外の場所で、子宮内膜に似た組織が増殖する疾患です。増殖した組織は体外に排出されず腹腔内にとどまり、周囲との癒着や炎症を起こして強い痛みを生じます。患者様の8割以上が月経困難症を伴い、不妊の原因にもなり得ます。
子宮腺筋症
子宮内膜が子宮の筋肉層に入り込んで増殖する疾患で、40代の方に多く見られます。帝王切開や筋腫手術の経験がある方、経産婦の方に発症しやすい傾向があります。組織の増殖により子宮壁が厚く硬くなり、強い痛みと経血量の増加を引き起こします。
子宮筋腫
子宮の筋肉に良性の腫瘍ができる疾患です。エストロゲンの影響を受けて長期間かけて成長するため、発見が遅れることがあります。30〜40代に多く、閉経後は縮小する傾向があります。経血量の増加やレバー状の血塊が特徴的で、貧血の原因にもなります。
生理前後の不調とは
月経前症候群(PMS)
月経開始の2日〜2週間前から心身の不調が現れ、月経開始とともに軽減・消失する状態です。下腹部痛、乳房の張り、むくみ、頭痛、イライラ、集中力低下など多様な症状が見られます。症状の程度や種類には個人差が大きく、日常生活への影響が軽い場合はPMSと診断されないこともあります。
月経前不快気分障害(PMDD)
PMSのうち、精神症状が特に重く日常生活に著しい支障をきたす状態です。理由もなく涙が出る、激しいイライラや攻撃性など、感情のコントロールが難しくなります。社会的認知度が低いため周囲に理解されにくく、ご自身を責めてしまう方も少なくありません。ホルモンの影響による症状であり、適切な治療で改善が可能です。
当院で行う検査
骨盤内検査(内診)
腟鏡を用いて外陰部・腟・子宮頸部の健康状態を確認します。通常は痛みを伴いませんが、炎症や癒着がある場合は痛みを感じることがあり、診断の手がかりとなります。性交渉歴のない方には直腸診で対応することもあります。
子宮頸がん・体がん検査
子宮頸部の細胞をブラシで採取し、顕微鏡で悪性細胞の有無を調べます。年齢や症状に応じて体がん検査も実施します。
超音波検査(エコー検査)
腹部または腟内から超音波で子宮・卵巣の状態を画像化し、内診ではわからない内膜の異常や嚢胞の有無などを確認します。性交渉歴のない方には直腸からの検査も可能です。
血液検査
ホルモン値や貧血、肝機能などを調べます。子宮内膜症が疑われる場合は腫瘍マーカー(CA125)も測定します。
その他検査
原因が特定できない場合、子宮鏡検査・子宮内膜生検・MRI検査などを追加することがあります。
当院で行う治療
原因疾患がある場合はその治療を優先します。機能性月経困難症には、症状や状態に応じて以下の治療を行います。
痛み止め
鎮痛剤やLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)で腹痛・腰痛・頭痛などを緩和します。
低用量ピル
排卵を一時的に抑制し、ホルモンバランスを整えることで症状を軽減します。経血量も減少するため貧血改善にも有効です。PMSの緩和や避妊効果も期待できます。
漢方
当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散などを体質に合わせて処方し、穏やかに症状を改善していきます。
月経困難症のよくある質問
ピルの副作用が心配です。
安全性の高い治療法です。体質に合わせた処方を行いますのでご安心ください。
月経中でも受診はできますか?
可能です。症状によっては月経中の診察が適している場合もありますので、ご予約時にお伝えください。
生理痛で受診しても良いですか?
もちろんです。痛みは体からのサインですので、遠慮なくご相談ください。
学生でも受診できますか?
未成年の方も受診していただけます。保護者の方とご一緒にお越しください。
